Juke Joint Shuffle #1
#1 Rolling stones
「とりあえず寝るよ、俺」
1988年10月某日、
15時キッカリにチェックインしたホテルの
小さな部屋のベッドに俺は倒れ込んだ。
いや、マジで眠かったんだ。
地元を明け方4時出発、この旅の目的地、
横浜に着いたのが13時過ぎ。
ほぼ9時間ずっと車の中だぜ。
今なら地元のICから高速道路一発だけど
あの頃は高速事情が全然違ったんだ。
「私は車の中で寝たから大丈夫。本でも読んでるよ」
と、コーヒーを飲みながら彼女が言った。
枕元のラヂオのスイッチを入れてね。
何しろラヂオが好きな彼女だった。
初めて来たヨコハマの
初めてのFM局にダイアルを合わせて
ゴキゲンにニコニコだった。
そんな彼女の笑顔が大好きだった俺。
俺はそんな笑顔とおんなじ部屋で
夢の入口のドアの前。そう。
そのまま夢の入口のドアを開けて本格的に
眠りにつこうとしていた幸せな俺に。
「わーーー!ねぇ、起きてッ!」
と彼女が大声で叫んだ。
「なんだよ」
と声にならないくらい小さな声で
不機嫌に返事した俺を遮るように。
「誰?このギター、
絶対にアナタの好きそうな音なんだけど🎶」
「ん?」
そのラヂオからは聴き覚えのない
フレーズが鳴ってる。
でもどこかで聴いたような音だ。
わぉ、なんだよこれ、カッコイイ🎶
そこでボリュームをマックスに上げた。
部屋中に響き渡るロックンロール。
誰だ?これは。もしかして?
イントロから歌メロに変わった瞬間、
曖昧な予想は確信に変わる。
Giving up lovin’, easy to do
People so pitiful
they never come through
Honey, honey, honey, I ain’t that way
キースだ!
そう言えばキースがソロアルバムを出すと
何かの雑誌で目にしたのを思い出した。
ロックはあるけど
ロールはどうしちまったんだい?
当時何かで読んだ
キースの言葉を噛み締めて
俺は夢の入口に背を向けた。
出口のないロックンロールの入口に立った。
ココロの中の拳を振り上げながら。
そして
一人でベッドにいる自分の不自然さに
ようやく気づいて彼女を呼び寄せた。
text by Juke photo by Joe
Juke Joint
ライブハウスの原型と言われてる、
アメリカ南部の黒人の集う店。
酒と音楽と猥雑と混沌が詰まった
ほんの一瞬の快楽と悦楽の場所。
バーチャルなJuke Joint Boxで
浅はかに誘う夜の乾杯を。
もちろん極上の音楽と共に。
そんな場所を提供するオーナーのjukeです。
この原稿を書こうと思い立った夜、
呑んで寝て寝苦しさに起きた朝方、
手にしたスマホのネットニュースで
チャーリーワッツの訃報を知った。
もしも宇宙人に、
ロックンロールとは何か?を説明するなら
キースの写真を見せればいい。
それと同じように、
もしも宇宙人に
ローリングストーンズとは何か?を説明するなら
俺なら迷わず
チャーリーのドラムを聴いてもらうだろう。
チャーリーワッツ
イコール
ローリングストーンズ。
この世からチャーリーがいなくなっても
ストーンズの音は止まらない。
そんな止まらない夜、
Juke Joint Shuffleで
今宵も一緒にストーンズを。
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